梅仕事~季節を感じる暮らしの手仕事~

Daily Column

我が家の庭には、古い梅の木がある。

梅の木に小さな蕾が付き始めると、春の気配を感じてワクワクする。
たくさんの蕾たちが少しずつ膨らんでいく様子を毎日眺めては、「そろそろかな。」と、ひとつめの花が咲くのを待ちわびる。

小さな蕾が付き始めた頃


最初のひとつが花開き、チラホラと咲き始めたら、あっという間に満開になる

今年我が家の梅が満開になったのは、3月2日だった。

「ママ!見に来て!」
眠っていた私を、興奮した様子の長男が朝早くに起こしに来た。

長男のあとについて、寝起きのぼんやりした頭でリビングに入っていくと
「ほら!見て!」
長男が指さした先、開け放った窓の外には、朝日を浴びてキラキラと輝く満開の梅の木があった。

なんて美しい光景なんだろう。
その姿に見惚れていると、長男が嬉しそうに言った。

「ね!すごいでしょ!ひな祭りだからね!」

…ひな祭りは明日だし、ひな祭りと言えば桃の花だ。
なんだか惜しい気もするけど決定的にズレている長男の発言を、彼らしいとほほえましく思ったのを覚えている。

満開の梅を眺めながらの朝ごはん

花が終わると、新芽が出る。
柔らかな緑の葉が枝を覆うと、小さな実が膨らみ始める。
新芽が伸びていく時期は、アブラムシとの闘いの時期でもある。梅の木はアブラムシが付きやすい。放置しておくと大繁殖して葉を枯らしたり、せっかくの梅の実をダメにしたりするので、この時期の私は毎朝歯ブラシを持って梅の木とにらめっこ。薬品を使いたくないので、枝葉についたアブラムシをひたすら歯ブラシで払い落としていく。

そうして大切に育てた梅の実がふっくらと膨らんで、ほんのり色づき始めた頃に収穫する。
子どもたちはこの収穫を楽しみにしていて、
「もうそろそろじゃない?」
梅の木を見上げては、私のゴーサインが出るのを待っている。

天気の良い日を選んで収穫した梅は、ざるに広げてしばらく置き、完全に熟すのを待つ。部屋中に甘いプラムのような香りが漂って、とても幸せな気持ちになる。香りを贅沢に味わってから、梅酒や梅干しの仕込みに入る。

1週間ほど前に塩漬けにした今年の梅は、梅酢があがってきて良い感じ。
私は柔らかなオレンジの梅そのものの色が好きなので、シソで色付けはしない。少し塩分を抜いてから蜂蜜漬けにするのが我が家の定番。
梅雨が明けたら、もうひと仕事。軽く天日干しをすれば梅干しの出来上がり。

たまたま梅の木のある家に住むことになって始めたけれど、いつのまにか私の暮らしになくてはならないものになっている梅仕事。
いつか子どもたちが育った時、実家の梅の木にまつわる様々な物語が、美しい記憶として彼らの中に残っていたら素敵だな、と思う。

長女が産まれた年は、この子が産まれるのと梅が咲くの、どっちが先かなと気にかけていた。今年の収穫時には次男がケガで入院していて、退院したら一緒に梅を収穫しよう、と約束した。退院して、楽しそうに梅の実を採る次男を見て、当たり前のように過ごしている毎日のありがたさが身に染みた。
そんなふうに私の中に積み重なっていく、甘く美しい記憶と同じように。

巡っていく季節と過ぎ去っていく時間。その中で、日々の暮らしは積み重ねていくものだ。 季節の手仕事を暮らしに取り入れると、季節が巡っていく幸せを、日々の暮らしのありがたさを、より深く感じることができる気がする。

だから私は、梅仕事が好きなのだ。

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